体育座りという、日本社会に巣食う非常識な標準
体育座りがなぜダメなのかについては、前回の記事に書いたので、知りたい方はそれを読んでほしい。
体育座りという座り方が、子供達の健康な体を少しづつ蝕んでいくという事は、客観的な事実である。
体育座りの非標準化、もしくは廃止を求める声は、次第に高まりつつある。
しかし、結論から言えば、体育座り廃止は実現不可能だろう。
小さい頃から体育座りをしてきた私達のような世代は、体育座りに対して何の疑問も抱かなくなっている人がほとんどだし、むしろ体育座りを何かしらの理由をつけて、肯定してしまう人が多勢なのである。そういった人達が大多数の中では、いくら「体育座りはやめておいた方がいい」と言っても、ほとんど効果がないのである。
しかし、声をあげることには意味がある。
声をあげれば、少なからず賛同者がでてくるかもしれないし、そこから、何かしらの可能性が生まれるかもしれない。
私は基本的には、体育座りをしない。
体に負担がかかる座り方を、わざわざしたいとは思わないからだ。
しかし、これはあくまでも私個人の見解なので、したい人はすればいいのではないか。
教養としての体育座り廃止論入門
物心ついた時から我々は、体育座りという座り方を、同調圧力という「逆らえない空気感」を元に事実上強制されて生きてきた。
これは、何事においても純粋であったがゆえの弊害なのかもしれない。
体育座りをしていて、「お尻が痛い」だとか、「腰が痛い」などの感覚を覚えた人は少なくない。
全国的に見れば、体育座りにより、尾てい骨痛を患い、病院に通う子供の事例も発生している。
なぜ、ただ座っているだけなのにも関わらず、これほどにまで、体に「痛み」を生じさせるのか。それには原因があるのである。
体育座りをする子供達
では、どんな原因があるというのか。
日本身体文化研究所代表で武蔵野美術大学講師の矢田部英正氏は、「膝を抱え込む座り方は、内臓が圧迫され、座骨への刺激もあります」と指摘している。
内臓が圧迫されれば、内臓機能にも悪影響を与える事は言うまでもない。
また、体育座りの姿勢は、硬い地面にお尻をつけ、お尻の下にある座骨で身体を支えていることになるため、座骨にかなりの負担がかかる。「お尻が痛い」と感じ、無意識に後傾姿勢をとると、今度はお尻の後ろ側にある尾骨に負担がかかってしまう。長時間の尾骨圧迫が、側弯症の原因になる可能性も危惧されている。
長く体育座りをしていると、背中が丸まってくる事も予想される。お尻が痛くなっても膝を抱えた姿勢をキープしようとすると、骨盤をかなり後ろに倒し、背中を丸めるしかなくなるからである。骨盤が後傾した姿勢が長時間続くと、腰に過度な負担がかかり、腰痛の一因になる。
体育座りをしていても特に痛みは無いという人もたまにいるが、気づいていないだけで、少しづつ体は蝕まれているのである。
東京大学教育学部付属中等教育学校で保健体育を教える浅川俊彦教諭は2018年の10月、矢田部氏を招いて、体育座りについて考えるイベントを開催。浅川氏は子どもたちの体の自由度を考え、体育座りをさせていない。
浅川氏は、「子どもたち自身が心地よく、集中できる座り方を考え、選べるのが望ましい。でも、教育現場でいったん『標準』として導入されると教員は思考停止し、子どもたちにとってより良い方法は何かを考えなくなってしまう」と話す。
- 体育座りは体に良くない? 専門家が指摘「内臓を圧迫、腰にも負担」 別の座り方も考えよう | 子育て世代がつながる - 東京すくすく
- なじみ深い体育座りは腰と内臓に悪い?体育座りが体に与える影響と、本当に正しい座り方 | EXGEL SEATING LAB エクスジェル シーティングラボ | 株式会社 加地
(引用元)
日本を代表する姿勢治療家の仲野孝明氏も、体育座りの危険性について警鐘を鳴らしている。
仲野氏のブログでの記述を、少し引用してみよう。
『もしも、体育座りをしていることがある方 まず、体育座りをやめるという選択を決断してみてください。
体育座り時の背中の丸さがとても まずい状況を引き起こしています。
背中には、脳から脊髄神経が通っており 全身につながる神経がでています。 その神経が、背骨の間からでる神経を圧迫してしまいます。』
体育座りは、今すぐ止めなさい!! | 姿勢治療家(R)仲野孝明公式サイト
(引用元)
これがプロの答えである。
体育座りは、健康を破壊する?
体育座りについては、「これはルールだ!」と言う人が少なからずいるが、この指摘は間違っているといえよう。
それはなぜか、
1965(昭和40)年に文部省(現・文部科学省)が発行した学習指導要領の補足『集団行動指導の手びき』の留意事項には、「集団行動の様式だけを取り上げて形式的に指導したり、必要のない場面で画一的な行動様式を強要することは決して望ましいものではない」とあり、現在の文部科学省も「体育の授業などでの座り方として、体育座りが絶対ではない」としている。
つまりどういうことか、大事なことなので二回言わさせていただくが、「体育の授業などでの座り方として、体育座りが絶対ではない」ということだ。
したがって、体育座りは「ルール」ではない。
体育座りが日本の教育現場において標準化し始めたのは、体育座りが、前記した1965年に文部省が発行した学習指導要領の補足『集団行動指導の手びき』において『腰をおろして休む姿勢』として紹介され、全国に広まった頃だとされている。
つまり、日本において体育座りの歴史というのはたった五十数年しかないのだ。
体育座りというのは、いかにも胡散臭い。
そしてこの、惨禍を招く体育座りという座り方、実は日本独自の座り方である。
「海外では主に奴隷や囚人に行わせていた座り方ではあるが、一般的な教育現場ではほとんど行われていない。」(Wikipediaより引用)
「海外では主に奴隷や囚人に行わせてきた」というのは、やや陰謀論的な感じも否めず、本当に正しいかは分からない。
しかし、「一般的な教育現場ではほとんど行われていない」というのはおおよそ事実だといえよう。
アメリカでは、あぐらが基本姿勢であり、それはヨーロッパ諸国などにおいても、おおむね同様である。
日本では体育座りが基本だけどアメリカでは…?「2国の色んな違い」がためになる! (2020年12月30日) - エキサイトニュース
体育座り廃止論はトンチンカンな考えではない。現に、体育座りを廃止を決断した中学校もポツポツと出始めている。
なぜ、体を傷つける恐れがある座り方をわざわざするのか、普通に考えればこんな事はおかしいという事はすぐに分かるはずだ。
体育座り廃止も含め、子供にとってどのような座り方がベストなのかを今一度考えるのが必要なのではないか。